2008年、日本において事業として初めてスクールソーシャルワーク(SSW)が導入されました。しかし、そのガイドラインもマニュアルも存在せず、実践現場は、仕事の内容や形態、活動するスクールソーシャルワーカー(SSWer)の専門性など地域による差が大きく、混乱したままです。
そこで本研究室では、まずSSW実践を可視化するために、2007年より、教員のニーズ調査から最も求められている活動を明確化し(家庭の問題意識が低いなどアプローチが困難である事例への対応)、複数の先進地SSWerへのインタビュー調査からSSWer実践モデル「学校と家庭のつなぎなおし」を作成してきました(※1)。
2010年からは、全国的にグッドプラクティスを実行している自治体やSSWerにインタビュー調査を複数回行い、プログラム理論に基づいて分析を行ってきました。さらに2012年に、全国の自治体やSSWerへの質問紙調査、その結果(※2)も含めて議論してきた「効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラムのあり方研究会」(全国の複数の自治体やSSWer、そしてそのスーパーバイザーが構成メンバー)によって精緻化させてきました。2013年には「効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラムのあり方研究会」を母体に試行実施やその報告会を行い精査してきました。全国調査や試行実施では、実証的にプログラムの効果も表れています(※3)。本マニュアルは、実施マニュアルと評価マニュアルで構成されており、効果的な実践と評価を行いやすいように示したものです。
実施マニュアルは実践者が試行し、意識して活動を進めていくこと、評価マニュアルは活動を振り返り課題を明確化させることに役立ち、実践を科学化する重要なツールとなります。本来は評価ファシリテーターとしての訓練を受けたものが行うのが望ましいですが、現実的には研修を受けたスーパーバイザーによる評価やSSWer同士のピアな関係による評価として活用、あるいは教育委員会担当者との意見交換などに活用して下さい。そして、事業評価を重ね、SSWをエビデンスに基づいた実践として定着、発展させていくことを目指しています。
SSWerは初心者に限らず、1人職場でどのように動けばいいのか悩んでいる実践家が多い現状です。また、SSW活動は日本では歴史が浅いこと、全国共通のガイドラインやマニュアルが存在しないことから、自治体がどのように事業設計するかによって内容が大きく左右されます。つまり、SSWerの動き方を表す実践プロセス(ここではサービス利用計画)のみならず、教育委員会による事業設計(ここでは組織計画)が必要です。双方、インパクトとの関連のある実践を経ていくよう作られたマニュアルを活用することで、より効果を生み出していく可能性があると考えます。
関係する皆様におかれましては、根拠に基づいたSSWの実践を展開していくよう、マニュアルに基づいた実践を試みていただきたいと思います。このマニュアルを活用いただける自治体があれば、是非ご連絡いただけたら有難いです。
最後になりましたが、このマニュアルを作成するにあたって試行調査にご協力くださった皆様、全国から研究会に参加くださった自治体の皆様、SSWer、スーパーバイザーの皆様、皆さんにお時間とご指導をいただいた成果をここにお届けします。本当にありがとうございました。
2014年3月
大阪府立大学 山野則子
※1 山野研究室(2010)『スクールソーシャルワークに関するハンドブック』
※2 山野研究室(2013)『エビデンス・ベースト・スクールソーシャルワーク』
※3 山野研究室(2014)『エビデンス・ベースド・スクールソーシャルワーク研究報告書
~効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラムの開発~』