A. (年度ごとの)事業開始に向けた情報収集
A-1 学校・地域の実態把握と課題分析
■目的
学校・地域の実態や社会資源の現状を把握・分析し課題を検討することによって、学校や地域のニーズを明確にし、改善に向けての見通しを立てる。
■具体的実施内容
学校・地域において、児童生徒の問題に対し教育委員会内外の機関がどのような支援状況にあるのかを把握し、各機関の役割や機能を具体的に理解する。また、学校・地域の実態や課題について情報収集を行い、全国と比較し、分析を行う。これらに基づき、教育委員会の上司や議会に改善の必要性を提言し、具体的な改善策を提案する。
A-2 ソーシャルワークの視点を持つ人材の必要性を認識
■目的
児童生徒の問題を改善するために、学校現場にソーシャルワークの視点が必要であることを認識する。
■具体的実施内容
教員とは異なるソーシャルワークの視点で子どもの側に立って家族や周りの人への働きかけを一緒に考えたり、福祉機関と学校をつないだり、潜在的に支援を必要としている子どもや保護者に働きかける人材が欠かせないという認識を持つ。学校現場に社会福祉の知識や考え方を加えることが必要であると認識する。
A-3 SSWに関連する情報収集
■目的
全国のSSWer活用事業を視察したり、SSW研修会に参加するなどして、SSWの役割・効果・活動情報などの情報を収集し、SSWer活用事業の実施を検討する。
■具体的実施内容
教育委員会内にSSWに関連する情報を収集する担当を置き、他の都道府県・市区町村のSSWer活用事業に関する視察や資料の取り寄せを行ったり、研修会などに参加するなどして、SSWに関する情報や社会福祉に関する職能団体の情報を効果的に収集する。
収集した情報をもとに、子ども・保護者にSSWerがどのような働きをするのかをイメージし、SSW導入の効果について調べる。また、人材養成機関から人材について情報収集するとともに、SSWerの専門性について学ぶ。
B. 戦略を練る
B-1 課題分析(A-1)と情報収集(A-3)をふまえたフレイム作り
■目的
学校・地域の課題分析や収集したSSWに関する情報を活用して、またその情報に基づき意見を募ることで、SSW事業化に向けた事業案を検討し、事業の狙いと成果指標を主導的に決定する。
■具体的実施内容
A-1で行った課題分析とA-3で行った情報収集に基づき、校長会役員、SVer、他事業関係者らを招集して会議を開く。教育委員会内の機関や福祉機関の相談事例の内容などを会議にて周知し、意見を募る。それらを踏まえて、校長会役員、SVer、教員代表、SCら、事業に関与する人々を集めて事業化に向けた会議を持ち、主導的に事業の狙いと成果指標を決定する。
C. 職務内容の設計
C-1 教育委員会の戦略を形にする
■目的
SSWer活用事業実施要綱や行動計画などを策定し、広く周知する。SSWerの配置形態を決定、学校や関係機関に対する働きかけの内容を具体化するなど、戦略を形にすることによって、SSWer活用事業の効果的な実施を図る。
■具体的実施内容
Aで収集した情報と、Bで練った戦略を基に、都道府県あるいは市町村教育委員会、学校と、SSWerやSVerの関係の全体構造を作り、役割分担を行う。事業の狙いや成果指標を踏まえてSSWerの勤務体系や配置形態(配置型・派遣型・拠点型など)を決定する。連絡協議会を立ち上げたり他事業との系統性や関連性を持たせる計画を立てる。
SSWer活用事業実施要綱・実施規則、SSWer活用ガイドラインを作り、事業土台を踏まえてSSWer活用の教育委員会・学校・SVer・SSWer・関係機関に働きかけるための行動計画を立てる。
学校や関係機関に対して年度始めにやるべきことを、以下のとおり確定する。
学校に対しては、SSW導入に関する周知を徹底して行い、SSWerとともに学校を訪問し、活用の打合せをする。生徒指導担当や特別支援教育コーディネーター、養護教諭などの担当者会議などでSSWerの業務や動きを具体的に周知し、早い段階で校内研修やケース会議をモデル的に実施する。配置型の場合、校内委員会にSSWerを位置付けてもらう。
関係機関に対しては、SSW導入に関する周知を徹底して行い、SSWerとともに関係機関を訪問し、SSWerを紹介する。関係機関の業務をSSWerが理解するために、SSWerに関係機関が行う研修への参加を呼びかける一方、SSWerの業務を関係機関が理解するために、関係機関担当者に教育委員会が行う研修への参加を、呼びかける。
SSWに関する情報を踏まえ、研修会やシンポジウムなどの周知活動を行ったり、事業実現のために校長会で情報発信したりする。
C-2 SSWerとの協議
■目的
SSWerとSSWerに関する認識をすりあわせ、活動内容やSV体制の活用などについて協議を行うことによって、効果的にSSWer活用事業を実施する体制を整える。
■具体的実施内容
SSWerの業務や動きを具体的に管理職に説明する。管理職・SSWer担当教員とSSWerの活用に関する認識をすり合わせ、学校のニーズを踏まえて活動内容を設定する。SV体制を学校に向けて説明する。校内の仕組みを用いて、SSWer活用事業を開始・展開する。
C-3 管理職・SSWer担当教員との協議
■目的
管理職・SSWer担当教員のSSWer活用事業に対する理解を促し、活用の枠組みを共に作り上げることによって、効果的にSSWer活用事業を実施する体制を整える。
■具体的実施内容
SSWerの業務や動きを具体的に管理職に説明する。管理職・SSWer担当教員とSSWerの活用に関する認識をすり合わせ、学校のニーズを踏まえて活動内容を設定する。SV体制を学校に向けて説明する。校内の仕組みを用いて、SSWer活用事業を開始・展開する。
C-4 SVerとの協議
■目的
SSWerの活動の仕方や展開についてSVerと定期的に点検する場を持ち、見直し評価を行う。また、SVerが相談を受けたり、教員や関係機関職員の研修を担当したりすることによって、効果的にSSWer活用事業を実施する体制を整える。
■具体的実施内容
定期的にSVerと協議を行い、SSWerの活用形態や役割、SSWの導入や展開方法、事業の企画について話し合う。若手教員や教職志望者など、次世代の学校を担う教員の研修や関係機関の初任者研修などで、SVerがSSWerの業務や動きを具体的に周知する機会を設ける。
C-5 関係機関に対する戦略の実行
■目的
関係機関に対してSSW導入に関する周知をしたり、SSWerの紹介や関係機関・SSWer相互の研修参加によって、互いの業務の理解を深める。
■具体的実施内容
SSW導入に関する周知を関係機関に対して徹底する。SSWerとともに関係機関を訪問し、SSWerを紹介する。教員と関係機関との情報交換の機会を設定することなど、SSWerとともに学校に提案する。関係機関の業務をSSWerが理解し、またSSWerの業務を関係機関が理解するために、互いの実施する研修への参加を呼びかける。
D. 事業の配置
D-1 SSWerの配置
■目的
学校の問題解決に必要な人材を見極め、SSwerとして配置することによって、効果的なSSWer活用事業の実施を図る。
■具体的実施内容
社会福祉の知識(制度やサービスなど)や社会福祉援助技術(グループワークなどの基本的なソーシャルワークスキル)を持ち、ソーシャルワーカーの倫理綱領など、ソーシャルワークの価値に関する理解が深い人、学校現場を理解している人を積極的に採用する。
D-2 他事業などを活用する事業配置
■目的
SSWer活用事業を、新規事業や既存事業と組み合わせて実施することによって、SSWer活用事業をより効果的に展開する。
■具体的実施内容
子育て支援や幼児教育の観点、特別支援教育に関する観点、地域支援に関する観点の事業との事業連携をさせながら、SSWer活用事業として充実させた形で開始する。また、それらを活用して、SSWer活用事業を展開する。校内の教育相談体制やケース会議の仕組みを用いて、SSWer活用事業を開始・展開する。
D-3 SVerの配置
■目的
専門的見地を有するSVerを置き活用を定例化することによって、学校・地域の実態や課題を踏まえた事業運営を実現し、SSWer活用事業をより効果的に展開する。
■具体的実施内容
課題分析と情報取集をふまえた事業土台にかなった複数専門領域のSVerを確保する。子ども家庭福祉分野のSWer経験を有する人材、SSWerに対して専門的見地から助言できる人材、教育委員会担当者に対して社会福祉の専門的見地から事業運営について助言できる人材を採用する。
D-4 SSWer活用事業に関連する人材の配置
■目的
SSWer活用事業に関連する人材を必要各所に配置することによって、SSWer活用事業がスムーズに展開し、SSWerに対する要望や活用が高まるようにする。
■具体的実施内容
学校にSSWerの担当者を置く。教育委員会にSSWer要請連絡の窓口となる担当者を置き、学校とSSWerとのパイプ役とする。教育委員会にSSWer活用事業の苦情受付担当者を置き、迅速に責任を以て解決に臨む。SSWerをサポートするような動きをする人材を配置する(SSWerサポーターなど)。
E. SSWerの資質の向上と維持
E-1 SV体制の構築
■目的
SVerがSSWerのサポートを行うSV体制を構築することによって、SSWerの資質の向上・維持を図る。
■具体的実施内容
SSWerの初任時または年度始めにSVerが共に学校に入って、どう動くか具体的に助言する。SVerが校内研修などの研修に関して実地に指導したり、ケース会議や困難な場面に同行したりする。初任時は必ず、期間を決めて個別SVを実施し、個別の資質向上をはかる。
E-2 連絡会の構築
■目的
定期的・継続的な連絡会を効果的に開催することによって、SSWerの活用がより効果的に行われるようにする。
■具体的実施内容
SVerを入れて連絡会を開催し、SVerの助言・指導を受けたり、連絡会で情報交換を行うことでSSWerがうまく機能するように働きかけ、子どもや教員にとってSSWが有効であることを学校に伝える。また、連絡会においてSSWerの課題やSSWer活用事業の課題をキャッチする。
都道府県教育委員会においては、SSWerを活用している市町村教育委員会担当者を連絡会のメンバーとする。さらに、市町村教育委員会担当者とSSWerが話し合える場を設定する。
市町村教育委員会においては、年に何度か、SSWerを活用している学校(管理職・SSWer担当教員など)を連絡会に招集する。
E-3 研修会・勉強会の開催
■目的
定期的な研修会や勉強会を行うことによって、SSWerの資質の向上およびSSWer活用事業以外の事業や他職種の専門性の理解を図り、他職種との連携をよりよくする。
■具体的実施内容
採用時に初任者研修、定期的に現任者研修を行う。研修の内容は、地域の課題分析と情報収集の結果を踏まえた体系的なものとする。SSWerと、活用した他事業のメンバーとの定期的な研修・会議の場を設定する。「スクールソーシャルワーカーの自己チェックリスト」を配布し、研修などで活用する。
E-4 相談援助活動のデータベース化
■目的
SSWerの活動を把握し、活動に責任を持つ。SSWer、教育委員会担当者とともに記録やケース記録、他機関との連携状況などをデータベース化することによって、SSWerの活動把握だけでなく、実践の目標・プランなどを明らかにするとともに、実践の振り返りに活用し、SSWerの資質の向上・維持を図る。
■具体的実施内容
日報、月報、ケース台帳、ケース記録、ケースカンファレンス・シート、引き継ぎ、関係機関送致データなどを作成・活用・蓄積する。
E-5 SSWer勤務環境の整備
■目的
SSWerが活動しやすい勤務状況を整えることによって、勤務意欲や資質の向上・維持を図り、よりよく機能していくようにする。
■具体的実施内容
教育委員会や配置校に固定された席を置き、名刺、携帯電話の支給など、SSWerの活動を理解した環境整備を行う。社会保障など、当初より待遇を改善する取り組みを行っている。SSWerの記録を保管する場所を確保し、記録をつける時間を保障する。SSWer同士がサポートを行える場を提供する。
F. 事業・実践の評価
F-1 SSWer活用事業の評価
■目的
事業の実践評価を行うことによって、事業の定着、拡充につなげる。
■具体的実施内容
子どものさまざまな課題(いじめ、虐待、暴力行為、不登校など)、学校や教員のさまざまな課題(学級崩壊、校内体制づくりなど)に対するSSWの効果を評価する。SSWer活用事業を適正に評価し、公開する(議会、研修、さまざまな会議など)。
関係機関や学校にSSWer活用に関する調査を実施し、SSWer活用事業・実践の評価を受ける。評価方法については、SSWer、SVerと協議し、専門性に照らしてSSWが評価できるものにする。SSWerへの苦情を分析し、事業の課題を洗い出す。
G. 事業の拡充
G-1 SSWer活用事業発展に向けた会議
■目的
SVer・SSWerなどとともにこれまでの活動を振り返り、今後に向けた議論をすることによって、さらなる事業の発展を目指す。
■具体的実施内容
SVer・SSWer・管理職・SSWer担当教員と、これまでの活動を振り返り、新たな活動(たとえば地域ネットワーク、非行のサポートチームなどにつながる方法など)を設定し、SSWer活用事業の今後に向けて議論する。SSWer、SVer、(場合によっては教育委員会担当者)と、SSWer活用事業の今後に向けて場を同じくして議論するSSWerの活用を推進するために配置形態(配置型・派遣型・拠点型など)を状況に合わせて柔軟に変更する。
G-2 SSWer活用事業の強化
■目的
SSWerの活用方法を検討・工夫し、学校による評価をもとに事業定着化の要望や提言を行うことによって、SSWer活用事業を推進し定着させる。
■具体的実施内容
事業評価に基づいて、窓口の明確化、書式の簡素化などSSWを活用しやすいような手続きを取る。
SSWerの配置について、何年間かで異動や増員を行い、SSW手法を広げる。SSWerの活動をシステム化する。SSWの理解を図るための研修や、教員や教育委員会担当者にケース会議を理解してもらうための研修を行う。SSWer活用事業と関連させた新しい事業を企画する。SSWerに関する条例や規程を作成する。
SSWの評価を学校から集め、議会に提言する。地域の大学と連携し、実習を受け入れるなど、SSWer養成や育成をバックアップする。SSWのねらい・位置づけ・多様な活用方法を印刷物にする。
G-3 SSWer活用事業の効果発信
■目的
SSWer活用事業の効果を、教育委員会内部に協力体制をつくり、さまざまなところに積極的に発信することによって、事業の促進・拡充をねらう。事業効果の発信は、教育委員会、SSWer、学校のモチベーションを高め、事業の活性化にもつながる。
■具体的実施内容
SSWer活用事業の効果について、教育委員会内のトップや他部局に報告し、協力体制を作る。また、実績や効果について都道府県・国、校長会や職員研修会、研究会や学会などで報告・発信する。マスメディアからの発信を活用して、SSWer活用事業の効果を広める。