5-1-2. 「効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラム」 効果的援助要素リスト ≪組織計画≫

 

<チェックのつけ方>                  チェック実施月:(   )月

上記の「チェック実施月:(   )月」の欄は、実施月をご記入ください。各チェックボックスの□に、該当する場合チェックをつけてください。

A「(年度ごとの)事業開始に向けて情報収集」、B「戦略を練る」、D「事業の配置」を意識的に実施するためにチェックリストをご活用ください。各項目の説明は、5-1-1(pp. 21~27)に掲載しています。ご参考にしてください。

このチェックボックスの各項目は、SSW確立に欠かせない教育委員会担当者の皆さんとSSWerの動きをリンクさせてモデル的な実践に照らして、より効果的な実践を目指すというSSWの確立のためのものです。大変お忙しいところ恐縮ですが、各自治体でのSSWの確立に役立つよう、ご利用いただけたら幸いです。

いくつかの項目はすでに効果に反映できる項目として実証しています(山野ほか2014)。定期的にチェックしてみてください。

 

A. (年度ごとの)事業開始に向けた情報収集

A-1      学校・地域の実態把握と課題分析

□児童生徒の問題に対して支援ができる機関・人材が、教育委員会内にあるか(相談事例の内容や件数)具体的に知っている

△適応指導教室 △教育センター △SC活用事業 △その他の教育相談促進事業

□児童生徒の問題に対して、教育委員会以外にどのような機関が関わっているのか把握し(相談事例の内容や件数)、それぞれの機関がどのような支援をできるのか具体的に知っている

△家庭児童相談室・市町村の児童相談部局 △要保護児童対策地域協議会 △児童相談所 △福祉事務所 △保健所 △警察 △少年サポートセンター △発達障害者支援センター △精神保健福祉センター △婦人相談所 △法テラス △地域包括支援センター △ひきこもり地域支援センター

□全国と比較して、地域ごとの問題行動や学校の実態について、以下の統計や関係機関から情報を得て分析を行っている

△犯罪率 △生活保護率 △就学援助率 △ひとり親家庭率 △不登校出現率
△いじめ認知件数 △暴力行為発生件数 △児童虐待件数

□児童生徒の問題について、データ分析に基づいて、上司や議会に改善の必要性と方法を提言している

□児童生徒の問題について、どのくらいの期間で、何をもって、どう改善するのかを明らかにする

□児童生徒の生活や背景となる問題(経済的困窮など)を事例レベルで把握する仕組みを持ち、データ化して検討している

 

A-2      ソーシャルワークの視点を持つ人材の必要性を認識

□教員とは異なる視点で、子どもの側に立って、家族や周りの人にどのように働きかけるかを一緒に考えてくれる人材が必要であると感じる

□学校現場に福祉機関と学校をつないでいく人材が必要であると感じる

□潜在的に支援を必要としている子ども・保護者に働きかける人材が必要であると感じる

□学校現場に社会福祉の知識や考え方を加えることが必要だと認識する

 

A-3      SSWに関連する情報収集

□全国のSSWerの活動の情報を収集する担当を教育委員会内に置く

□他の都道府県・市区町村のSSWer活用事業を視察したり、資料を取り寄せたりしてSSWに関する情報を収集する

□SSW研修会・講演会・ワークショップなどに参加し、SSWに関する情報を収集する

□社会福祉に関する職能団体の情報を収集する

□収集した情報をもとに、子ども・保護者にSSWerがどのような働きをするのかをイメージする

□人材を養成する地域の機関とのつながりを持ち、人材について情報収集する

□人材を養成する地域の機関とのつながりを持ち、SSWerの専門性について学ぶ

□SSW導入の効果について調べる

 

B.戦略を練る

B-1.  課題分析(A-1)と情報収集(A-3)をふまえたフレイム作り

□事業の戦略をともに練り上げてくれる職能団体の協力者や学識経験者などやSVerを探し、意見交換会や会議を開いて事業の土台を作る

□A-1で把握した教育委員会内にある機関や福祉機関の相談事例の内容や件数について情報提供しながら、校長会役員、SVer、SCなど他事業の関係者(D-2参照)と事業企画に向けて意見を聞く場を持つ

□校長会役員、SCなどから聞いた意見をふまえて、社会福祉の視点を持つ、SVerや事業を練り上げてくれる職能団体の協力者や学識経験者などとコミットしながら、教育委員会担当者が主導的に事業の狙いと成果指標とを決定する

□A-1で把握した、教育委員会内にある機関の相談事例の内容や件数などから、事業計画を作成する

□A-1で把握した、福祉機関の相談事例の内容や件数から、事業計画を作成する

 

C. 職務内容の設計

C-1  教育委員会の戦略を形にする

□都道府県あるいは市町村教育委員会、学校とSSWerやSVerの関係の全体構造を作る

□都道府県あるいは市町村教育委員会、学校とSSWerやSVerの役割分担を決める

□狙いや成果指標を踏まえてSSWerの勤務体系を決定する

□狙いや成果指標を踏まえてSSWerの配置形態(配置型・派遣型・拠点型など)を決定する

□事業の戦略をともに練り上げてくれた職能団体の協力者や学識経験者などを含めて連絡協議会を立ち上げる

□他事業(D-2参照)と系統性や関連性を持たせる計画を立てる

□Bで練った戦略を基に、主導的にSSWer活用事業実施要綱・実施規則を作る

(C-2、C-3の協議は戦略を形にしてから実施することを念頭に)

□A-3で収集したSSWに関する情報をもとに、SSWer活用ガイドラインを作る

□SSWer活用依頼の様式やフロー図を作る

□以下のところに働きかけるための行動計画を立てる

△教育委員会自体でやること (具体的には、D-2参照)

△SSWer (具体的には、C-2参照)

△学校 (具体的には、C-3、C-4参照)

△SVer (具体的には、C-4参照)

△関係機関 (具体的には、C-5参照)

□やるべきことを年度始めに確定する

△学校へのSSWer導入に関する周知徹底

△学校で行う、SSWer同席の上でのSSWerの活用方法の打合せ

△教員の担当者(生徒指導担当、特別支援教育コーディネーター、養護教諭)の会議などを活用したSSWerの業務や動きの周知

△校内研修を早い段階で実施することを提案

△ケース会議をモデル的に早い段階で実施することを提案

<配置型>

△校内にSSWer担当教員を置く

△校内での定例の管理職・SSWer担当教員との調整会議を位置付ける

△どこかの校内委員会にSSWerを位置付ける

□SSWに関する情報を踏まえてSSW研修会やシンポジウムなどの周知活動を広く市民に向けて行う

□事業を実現するためにSSWに関する情報を校長会などで発信する

 

C-2      SSWerとの協議

□自治体の最優先課題をSSWerと共有する

□SSWerと、SSWerの活用に関する認識をすり合わせ、事業全体に関して役割分担する

□SSWerと、教育委員会のニーズを踏まえて活動内容を設定する

□SSWerと、学校のニーズを踏まえて活動内容を設定する

□現状のSV体制をSSWerに向けて説明し、より効果的な活用の仕方を協議する

 

C-3      管理職・SSWer担当教員との協議

□教育委員会担当者がSSWerの業務や動きを具体的に管理職に説明する

□管理職・SSWer担当教員と、SSW活用に関する両者の認識をすり合わせる

□管理職・SSWer担当教員と、学校のニーズを踏まえて活動内容を設定する

□管理職・SSWer担当教員に、SV体制を学校に向けて説明する

<派遣型>

□管理職・SSWer担当教員と、SSWer活用の手順を確認する

□校内の教育相談体制やケース会議の仕組みを用いて、SSWer活用事業を開始・展開する

 

C-4      SVerとの協議

□SSWerの活用形態や役割についてSVerと協議する

□SVerと相談し、SSWの導入や展開方法を定期的に協議する

□事業の企画についての意見交換をSVerと定期的に行う

□若手教員や教職志望者など、次世代の学校を担う教員の研修でSVerがSSWerの業務や動きを具体的に周知する機会を設ける

□関係機関の初任者研修などにおいて、SVerがSSWerの業務や動きを具体的に周知する機会を設ける

 

C-5  関係機関に対する戦略の実行

□SSW導入に関する周知を、関係機関に対して徹底する

□SSWerとともに関係機関を訪問し、SSWerを紹介する

□教員と関係機関との情報交換の機会を設定することなど、SSWerとともに学校に提案する

□関係機関の業務への理解を促すために、関係機関が行う研修への参加をSSWerに呼びかける

□SSWerの業務への理解を促すために、教育委員会が行うSSWerに関する研修への参加を、関係機関担当者に呼びかける

D. 事業の配置

D-1      SSWerの配置

□社会福祉の知識(制度やサービスなど)を理解している人材を積極的に採用する

□学校現場を理解している人材を積極的に採用する

□社会福祉援助技術(グループワークなど基本的なソーシャルワークスキル)を所持している人材を積極的に採用する

□ソーシャルワーカーの倫理綱領など、ソーシャルワークの価値に関する理解の深い人を積極的に採用する

 

D-2      他事業などを活用する事業配置

□SSWer活用事業が機能するよう教育委員会内にある機関(適応指導教室・教育センター・SC活用事業)と事業連携させて事業を開始・展開する

□子育て支援や幼児教育の観点(家庭教育支援事業や家庭児童相談室など)、特別支援教育の観点(特別支援教育総合推進事業など)、地域支援の観点(学校支援や社会教育事業、コミュニティソーシャルワーカー・地域福祉のコーディネーターに関する事業など)と事業連携させて事業を開始・展開する

□校内の教育相談体制やケース会議の仕組みを用いて、SSWer活用事業を開始・展開する

 

D-3      SVerの配置

□SVerの活用を定例化する(例:月1回以上)

□課題分析と情報取集をふまえた事業土台にかなった複数の専門領域のSVerを確保する

(例:社会福祉士 精神保健福祉士 臨床心理士 弁護士など法律の専門家 教員OB 警察 大学教員)

□子ども家庭福祉分野のSWer経験を有するSVerを配置する

□SSWerに対して専門的見地から助言できる人材を採用する

□教育委員会担当者に対して社会福祉の専門的見地から事業運営について助言できる人材を採用する

 

D-4. SSWer活用事業に関連する人材の配置

□SSWerの担当者を学校に置く

□教育委員会に担当者を置き、SSWer要請連絡の窓口とするとともに、学校とSSWerとのパイプ役とする(例SSWer活用の目的の明確化を、学校、SSWer双方に促す)

□教育委員会にSSWer活用事業の苦情受付担当者を置き、迅速に責任を以て解決に臨む

□SSWerをサポートするような動きをする人材を配置する(SSWerサポーターなど)

E. SSWerの資質の向上と維持

E-1      SV体制の構築

□初任時(あるいは年度始め)にSVerがSSWerとともに学校に入ってどう動くか具体的に助言する

□SVerがケース会議に同行し、実地に指導する

□SVerが校内研修などの研修に関して実地に指導する

□SVerが困難な場面に同行し、実地に指導する

□初任時は必ず、期間を決めて個別SVを実施し、個別の資質向上をはかる

 

E-2      連絡会の構築

□SVerを入れて連絡会を開催し、SVerの助言、指導を受ける

□連絡会で情報交換を行うことでSSWerがうまく機能するように働きかける

□連絡会において、子どもや教員にとってSSWが有効であることを学校に伝える

□SSWerの課題をキャッチする

□SSWer活用事業の課題をキャッチする

<都道府県教育委員会>

□SSWerを活用している市町村教育委員会担当者を含めて、連絡会を開催する

□市町村教育委員会担当者とSSWerが話し合える場を設定する

<市町村教育委員会>

□年に何度か、SSWerを活用している学校(管理職・SSWer担当教員など)を連絡会に招集する

 

E-3      研修会・勉強会の開催

□採用時に初任者研修を行う

□定期的に現任者研修を行う

□地域の課題分析と情報収集の結果を踏まえた研修内容を体系的に実施する

(例:△問題種別研修 △模擬ケース会議研修 △自治体の組織的な動きに関する研修 △家庭児童相談員、などとの合同研修 △職能団体と共に開催する研修)

□SSWerと、活用した他事業(D-2)の家庭教育支援員、コミュニティソーシャルワーカー、家庭児童相談員などとの定期的な会議の場を設定する

□「スクールソーシャルワーカーの自己チェックリスト」を配布し、研修などで活用する

 

E-4      相談援助活動のデータベース化

□データの作成:以下を作成している(以下△のうち3つにチェックが入ればとする)

△日報 △月報 △ケース台帳 △ケース記録 △ケースカンファレンス・シート △引き継ぎ △関係機関送致

□データの活用:以下を活用している(以下△のうち3つにチェックが入ればとする)

△日報 △月報 △ケース台帳 △ケース記録 △ケースカンファレンス・シート △引き継ぎ △関係機関送致

□データの蓄積:以下を蓄積している(以下△のうち3つにチェックが入ればとする)

△日報 △月報 △ケース台帳 △ケース記録 △ケースカンファレンス・シート △引き継ぎ △関係機関送致

 

E-5      SSWer勤務環境の整備

□教育委員会や配置校に固定された席を置く

□SSWerの活動を理解した環境整備(以下、SSWerが使えるように用意する)

以下△のうち1つにチェックが入ればとする)

△名刺 △自転車 △携帯電話(電話機) △パソコン(インターネット接続)

□当初より待遇を改善する取り組みを行っている(以下△のうち2つにチェックが入ればとする)

△身分保障(雇用年限なし)△社会保障(社会保険など) △電話代 △交通費支給 △賃金保障(臨床心理士と同等など) △勤務時間中の研修の保障

□SSWerの記録を保管する場所を確保する

□記録をつける時間を保障する

□SSWer同士がサポートを行える場を提供する

F. 事業・実践の評価

F-1      SSWer活用事業の評価

□子どものさまざまな課題(いじめ、虐待、暴力行為、不登校など)に対するSSWの効果を評価する

□学校や教員のさまざまな課題(学級崩壊、校内体制づくりなど)に対するSSWの効果を評価する

□SSWer活用事業を適正に評価し、公開する(議会、研修、さまざまな会議など)

□関係機関にSSWer活用に関する調査を実施し、SSWer活用事業・実践の評価を受ける

□学校に調査を実施し、SSWer活用事業・実践の評価を受ける

□評価方法について、SSWer、SVerと協議し、専門性に照らしてSSWが評価できるものにする

□SSWerへの苦情を分析し、事業の課題を洗い出す

 

G. 事業の拡充

G-1      SSWer活用事業発展に向けた会議

□SVerと、これまでの活動を振り返り、新たな活動(たとえば地域ネットワーク、非行のサポートチームなどにつながる方法など)を設定する

□SSWerと、これまでの活動を振り返り新たな活動を設定する

□管理職・SSWer担当教員と、これまでの活動を振り返り新たな活動を設定する

□SVerと、SSWer活用事業の今後に向けて議論する

□SSWerと、SSWer活用事業の今後に向けて議論する

□SSWer・SVerと、SSWer活用事業の今後に向けて場を同じくして議論する

□SSWerの活用を推進するために配置形態(配置型・派遣型・拠点型など)を状況に合わせて柔軟に変更する

 

G-2      SSWer活用事業の強化

□窓口の明確化、書式の簡素化などSSWerを活用しやすいような手続きを取る

□SSWerの配置について、何年間かで異動や増員をし、SSWの手法を広げる

□SSWの理解を図るための研修(校内・自治体内など)を行う

□教員や教育委員会担当者にケース会議を理解してもらうための研修を行う

□SSWerのこれまでの活動をシステム化する

□SSWer活用事業と関連させた新しい事業を企画する

□SSWerに関する条例や規程を作成する

□SSWの評価を子ども・保護者や学校から集め、議会に提言する

□地域の大学と連携し、実習を受け入れるなど、SSWer養成や育成をバックアップする

□SSWのねらい・位置づけ・多様な活用方法を印刷物にする

 

G-3      SSWer活用事業の効果発信

□SSWer活用事業の効果について、教育委員会内のトップや他部局に報告し、協力体制を作る

□SSWer活用事業の効果について、校長会や職員研修会で報告する

□SSWer活用事業の実績について、都道府県・国レベルに報告する

□SSWer活用事業の効果について、研究会や学会などで口頭や文書で発信する

□マスメディアからの発信を活用して、SSWer活用事業の効果を広める