4-1. 語句の定義

○ソーシャルワーク(SW)

 

ここでは、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)が2000年7月27日に採択した「ソーシャルワークの定義」の内容を指す:

「ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウエルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である」(社団法人日本社会福祉士学会 2001)。

以下、ソーシャルワークをSWとする。

 

○スクールソーシャルワーカー(SSWer

スクールソ-シャルワーカーは、学校をベースにソーシャルワーク活動を展開していく専門職である。文部科学省(2010)『生徒指導提要』では、「社会福祉の専門的な知識、技術を活用し、問題を抱えた児童生徒を取り巻く環境に働きかけ、家庭、学校、地域の関係機関をつなぎ、児童生徒の悩みや抱えている問題の解決に向けて支援する専門家」とされている(文部科学省 2010:120)。

以下、スクールソーシャルワークをSSWとする。

 

○教育委員会

ここでは、「教育委員会」は、SSWer活用事業を実施する教育委員会を指す。そのほかの意味を持つ場合は、都道府県・市町村の別などの説明を加える。

 

○教員

ここでは、同義語である「教師」を使用せず、「教員」の言葉を使う。広辞苑(第六版)によれば、「教員」とは、「学校に勤務して教育を行う人。教師。教育職員。」である。

 

○スーパービジョン(SV

スーパービジョンは、実践への経験及び知識をもつスーパーバイザーによってワーカー(スーパーバイジー)との間に結ばれるスーパービジョン関係を通して実施される。その主たる目的は、クライエントへの援助の向上とワーカーの養成にある。なお、スーパーバイザーは、機関内の経験と知識のある職員が担当する場合と外部から招く場合がある。

スーパービジョンは、管理的・教育的・支持的機能の3つの機能をもつ。管理的機能とは、機関の目的に即して効果的にサービスが提供できるようにすることである。また、ワーカーが力を発揮できる組織づくりやワーカーの力量に応じたケースの配分等もこの機能に含まれる。教育的機能とは、主にケースへの指導を通して実践に必要な価値、知識、技術を具体的に伝えることである。これは、現任訓練の側面からも重要な意味をもつ。また、支持的機能とは、信頼関係に裏打ちされたスーパービジョン関係を通して、ワーカーの実践をスーパーバイザーが精神的にサポートすることである(山縣・柏女 2010:218)。

以下、スーパービジョンをSVとする。

 

○スーパーバイザー(SVer

監督者または管理者。スーパーバイジーに対してスーパービジョンを行う熟練した指導者のこと。

ここでは、文部科学省「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領」(平成21年3月31日)の「事業の内容」に「スーパーバイザーの配置」として規定された、「スクールソーシャルワーカーに適切な指導・援助ができるスーパーバイザーを学校・教育委員会等に配置」のことを指す(文部科学省 2009)。(ただし、スーパービジョンの学術的意味とは異なる)

以下、スーパーバイザーをSVerとする。

 

SV会議(スーパービジョン会議)

ここでは、SSWerの専門性を生かした事業になるように、教育委員会が主催して、SVerとともにSSWer活用事業の企画についての意見交換を行う場をいう。

 

○ケース会議

事例の援助過程において、的確な援助を行うために携わる者が集まり、討議する会議のこと(中央法規出版編集部 2012:114)。

ここでは、ケース会議はさまざまなケース会議を包括的に指し、特に「連携ケース会議」とした場合は、他機関と連携して行うケース会議のうち、要保護児童対策地域協議会を除く関係機関との会議を指す。援助が複数の機関、施設にまたがる場合は、関係する担当者が出席し、チーム対応を展開する場ともなる。

 

○アセスメント

援助を開始するにあたって、問題状況を把握し理解するソーシャルワークのプロセスの一つ。問題状況の確認、情報の収集と分析、援助の方法の選択と計画までを含む幅広い概念である。事前評価と訳されることもある(山縣・柏女 2010:5)。

 

○ケースカンファレンス・シート 

ケース会議の際の記録で、議事録と異なり、アセスメント結果、決定した支援目標、期間、役割分担等の計画を記録できるように様式化されたものをいう。

 

○連絡協議会

SSWer活用事業を効果的かつ円滑に実施するため、SSWerとの活動報告、関係機関等との情報交換や連絡調整等を行う場(文部科学省 2009)。

 

○スクールカウンセラー(SC

スクールカウンセラーは、日本臨床心理士会の認定を受けた臨床心理士あるいは子どもの臨床心理士として高度な専門知識と経験を有する者である。現状では臨床心理士以外のものもスクールカウンセラーとして活動している。スクールカウンセラーの職務は①児童生徒のカウンセリング、②カウンセリング等に関する教職員および保護者に対する助言・援助、③児童生徒のカウンセリング等に関する情報収集・提供、④その他の児童生徒のカウンセリングに関し、各学校において適当と認められるものである。1995年文科省(現文部科学省)は、「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」によって開始される(文部科学省 2007)。

以下、スクールカウンセラーをSCとする。

 

○校内支援者

ここでは、学生ボランティア、不登校支援協力員など、学校に入って子どもを支援する役割の人とする(SC、養護教諭、非常勤の支援員、相談員、用務員などの校内支援者など)。

 

○校外支援者

ここでは、校内支援者を除く、校外で子どもを支援する人すべてとする(教育委員会の事業担当者、民生委員・児童委員、主任児童委員、地域住民、児童相談所や家庭児童相談室などの関係機関など)。

 

○関係機関

ここでは、SSWerが関わる機関を指す。具体的には、家庭児童相談室・市町村の児童相談部局、要保護児童対策地域協議会、児童相談所、福祉事務所、保健所、警察、発達障害者支援センター、精神保健福祉センター、婦人相談所、法テラス、地域包括支援センター、ひきこもり地域支援センターなどを指す。

 

○要保護児童対策地域協議会

2004年の児童福祉法改正により法定化された市町村における児童家庭相談体制強化を図るための協議会である。虐待を受けた子どもをはじめとする要保護児童の早期発見や援助・保護を図るため、地域の関係機関や民間団体等が情報や考え方を共有し、適切な連携のもとで援助していくためのネットワークである。ネットワークの中核機関が定められ、この機関が中心となって情報や援助の一元管理を行うこととされている(山縣・柏女 2010:366)。

 

○社会資源

生活上のニーズを充足するさまざまな物資や人材、制度、技能の総称。社会福祉施設や介護サービス、社会生活に関する情報提供なども含まれる。これらを供給主体から分類すれば、行政や社会福祉法人によるサービスなどのフォーマルなものと近隣の人々や友人などのインフォーマルに分けられるが、その境界は明確ではない。社会福祉援助の基本枠組みは問題を抱える当事者が社会資源を利用できるようにしていくことである。ニーズの多様化に伴い、社会資源も多様なものが生まれてきた。その反面、当事者が適切な社会資源を探して利用することが次第に難しくなっている。また、有効な社会資源がない場合は、開発していくことが求められることになる(山縣・柏女 2010:150)。

 

引用文献

中央法規出版編集部編(2012)『社会福祉用語辞典(第6訂)』中央法規出版.

文部科学省 (2007)「児童生徒の教育相談の充実について ―生き生きとした子どもを育てる相談体制づくり」
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/066/gaiyou/1287754.htm, 2013.3.11).

文部科学省(2009)「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領」
(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2011/11/07/1312658_04.pdf, 2013.3.11).

文部科学省(2010)『生徒指導提要』教育図書.

社団法人日本社会福祉士学会(2001)「国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)のソーシャルワークの定義」(http://www.jacsw.or.jp/01_csw/08_shiryo/teigi.html, 2013.3.11).

山縣文治・柏女霊峰編(2010)『社会福祉用語辞典――福祉新時代の新しいスタンダード(第8版)』ミネルヴァ書房.