3-1. 目的
本マニュアルは、実施マニュアルと評価マニュアルの2つで構成されている。SSWer活用事業を展開していく際の共通の枠組みを提示したものである。マニュアルは、(1)教育委員会担当者が活用する「組織計画」、(2)SSWerが活用する「サービス利用計画」の2つを作成している。
実施マニュアルは、エビデンス(根拠)が科学的に実証された実践(Evidence Based Practice)を実践者が意識的に実施していくことを目的にしている。評価マニュアルは、実践を振り返り課題を明確化させるなど評価を行うことが目的である。まずは、実践者が実施マニュアルを理解し、実施すること、そしてその実践を評価するために評価マニュアルを活用する。
評価は、本来は評価ファシリテーターとしての訓練を受けたものが行うのが望ましいが、現実的には研修を受けたスーパーバイザーによる評価がスーパービジョンとして活用できるものである。あるいはSSWer同士のピアな関係による評価として活用、あるいは教育委員会担当者との意見交換などに活用が可能である。事業評価として重ね、エビデンスに基づいた実践として定着、発展させることを目指す。
なお、本マニュアルは共通の枠組みを示したものである。本マニュアルを議論の土台として、自治体ごとの応用がいずれ生じることも想定している。
3-2. 対象
このマニュアルが対象としているのは、事業実施主体である教育委員会のSSWer活用事業担当者とSSWerである。主に、組織計画を教育委員会担当者、サービス利用計画をSSWerが活用できるように作成している。ただし、SSWer自身が事業発展に貢献する組織計画を行うことも必要であるので、サービス利用計画のの一部の項目にSSWerが関与するものを含めている。それらの項目については、項目全体がSSWerのマクロアプローチに該当するものには項目名の後ろに(マクロアプローチ)と記している。項目全体がマクロアプローチに該当するわけではないが項目の中にいくつか含むものについては、p.47以降に示す効果的援助要素の中に、波線を引いて示している。
3-3. 留意点
実施マニュアルの前半で「目的および具体的実施内容」を示し、後半では実際の項目を記載している。各チェックボックスには□と△の2種類の記号を使い分けている。□は、「以下を活用している」という意味で用いている。△は、□の下位項目であり、1つずつ活用しているかどうかを考えるポイントとなっている。
期間をあけて定期的に実施することによって、効果的な実践を意識することが可能となる。そのため、複数回チェックを実施することを考慮し、効果的援助要素リスト(チェックボックスのページ)をコピーして使用し、日常の活動に活用する。
評価としては、評価マニュアルにあるフィデリティ尺度(p.131以下)のページをコピーして実践者がチェックし、評価ファシリテーター(SVが可能性大)が確認し、この用紙をもとにやり取りを行うために使用する。
≪組織計画≫
都道府県教育委員会、あるいは市町村教育委員会のいずれが主体となって行うのかにより、それぞれのフレイムが異なってくる。ここでは主体となる教育委員会中心に記載してある。両者が主体となる場合は、それぞれが役割分担のもとで行う意味で記載してある。
≪サービス利用計画≫
SSWerの活動は「派遣型」と「派遣型」の配置形態によって異なるため、どちらか一方のみが該当すると考えられる項目については、チェックリスト中に<配置型>あるいは<派遣型>と記載した。(「巡回型」といわれる配置形態は、ここでは便宜上「派遣型」に含む。)このような指定のある項目は、該当する配置形態のところ(配置型・派遣型を兼務されている(並行)場合は、両方)の項目を参照されたい。また、<配置>と<派遣>に共通して該当すると考えられる項目については、特に記載していない。
引用文献
道明章乃・大島巌(2011)「精神障害者退院促進支援プログラムの効果モデル形成に向けた『効果的援助要素』の検討――全国18事業所における1年間の試行的介入評価研究の結果から」『社会福祉学』52(2),107-20.
Rossi,P.H.,Lipsey,M.W.,& Freeman,H.E.(2004).Evaluation:A systematic approach(7th ed).London and New Delhi:Sage Publications.(=2005,大島巌・平岡公一・森俊夫・元永拓郎[監訳]『プログラム評価の理論と方法―システマティックな対人サービス・政策評価の実践ガイド』日本評論社.)
山野則子ほか(2011)「スクールソーシャルワーカーによる支援プログラムに関する研究」白澤政和『ソーシャルワークの評価方法と評価マニュアル作成に関する研究 第一報』,83-143.
山野則子ほか(2012)「スクールソーシャルワーカー配置プログラムに関する研究」白澤政和『ソーシャルワークの評価方法と評価マニュアル作成に関する研究 第二報』,38-91.
Bond et al.(2000).Measurement of fidelity in psychiatric rehabilitation.Mental Health Services Research,2,75-87.
Drake et al.(2005).Evidence-Based Practices in Mental Health Care.American Psychiatric Association.
参考文献
大島巌 他(2010)『効果の上がる退院促進支援事業・就労移行支援事業モニタリングシステムの開発~効果的プログラム要素を活用したフィデリティ尺度の作成』平成21年度日本社会事業大学学内共同研究報告書.