生活保護の動向の中で被保護人員・保護率については、平成7年(1995年)度を底に一貫して上昇しています。被保護人員の対前年同月比の伸び率は、平成22年(2010年)11月には対前年同月比110.4%です(社会・援護局関係主管課長会議資料,平成22年3月2日開催)。
2004年12月、厚生労働省社会保障審議会福祉部会の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は報告書をまとめました。その報告書の中では、労働部局との連携による就労支援を初めとする自立支援プログラムの導入が提言されました。
生活保護自立支援プログラムとは、福祉事務所が地域の受給者の状況を把握した上で、必要な支援を組織的に実施するものです。福祉事務所は、受給者の状況や自立阻害要因について類型化を図ります。さらに、それぞれの類型ごとに取り組むべき自立支援の具体的内容及び実施手順等を定め、これに基づき個々の受給者を支援していきます。
同2005年、厚生労働省は、福祉事務所に対して自立支援プログラムの作成・実施に関する通達を出しました。これを受け、各福祉事務所は多数の自立支援プログラムを作成しました。しかし、各福祉事務所で作成されたプログラムの内容は、福祉事務所間でほとんど共有されておらず、各福祉事務所が独自の試みを続けているのが現状です。制度開始4年後の平成21年3月に厚生労働省から「生活保護自立支援プログラム事例集」が発行され全国の福祉事務所に配布されましたが、その内容は各福祉事務所のプログラムの羅列に留まっており、複数のプログラムに共通する援助要素を特定するには至っていませんでした。
さらに、生活保護自立支援プログラムの効果についても、生活保護受給者のうち、生活保護自立支援プログラムを受けて就職・増収した者の割合は、平成18年では0.64%、平成22年では0.61%となっており、生活保護自立支援プログラムが生活保護受給者の就労状況に大きな変化を与えているとは言いがたいのが実情です。
このような現状を受け、私たちは、各福祉事務所の工夫を集積した、効果的なプログラムを作成する必要があると考えました。これが「生活保護就労支援プログラム」です。「生活保護就労支援プログラム」の目的は、生活保護利用者の希望に応じた就労の実現に向けた支援を提供することです。
生活保護自立支援プログラム事例集は、経済的自立に関する個別支援プログラムとして、次の9つの取り組みを取り上げています。
- 生活保護受給者等就労支援事業活用プログラム
- 就労支援専門員等の専門職員を活用して就労支援を行うもの
- 協力事業所において職場適応訓練を実施するもの
- 就職セミナーの開催など、就労意欲を高めることに特化した支援を行うもの
- SV・CWのみで就労支援を行うもの
- 中学生の高等学校等への進学、高校生の在学の継続、児童・生徒等に対して支援を行うもの
- 資格取得に関して支援を行うもの
- 年金裁定や年金受給権の再確認など、年金受給に関する支援を行うもの
- その他の経済的自立に関する個別支援プログラム
「生活保護就労支援プログラム」は①「生活保護受給者等就労支援事業」活用プログラムを中心とし、他の②〜⑨のプログラムも含んだ内容になっています。