この環境心理学的なベースを基本とした「認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラム」は、特別養護老人ホーム等において10年以上の実践研究がなされており、実践マニュアル(児玉桂子・古賀誉章・沼田恭子・下垣 光:PEAPにもとづく認知症ケアのための施設環境づくり実践マニュアル.中央法規.2010)や環境づくウエブサイト(http://www.kankyozukuri.com/)等が整備されている福祉実践プログラムである。
現在、プログラム評価理論および方法論を適用し、「施設環境づくり支援プログラム」のさらなる発展と普及のため、体系的な整理による暫定効果的実践モデルの構築など、様々な試みがなされている。
認知症ケア環境構築の必要性
2012年の介護保険法改正の中で、「認知症に関する調査研究の推進等」として、国及び地方公共団体が認知症である者の心身の特性に応じた介護方法に関する調査研究の推進とその成果の活用に努めることが明記された。このことは、急増する認知症高齢者に対するサービス開発と、効果的な介護事業の実施方法の提示が、我が国の喫緊の課題であることを示している。
とくに特別養護老人ホームなど介護保険3施設では、認知症高齢者が9割以上を占め、従来のホスピタルモデルの施設環境から、認知症の行動特性に適したケアと環境の構築が急務となっている。
今まさに、認知症ケア環境構築のため、効果的な福祉実践プログラムの開発と、望ましい結果を実現するための福祉実践モデルが社会に求められている。
認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラム
「認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラム(以下「施設環境づくり支援プログラム」と略称)」は、高齢者施設の物理的環境・ケア的環境・運営的環境の改善を図るために開発されたものである。このプログラムは6ステップから構成され、中心となって進める介護職員のコミュニケーションや思考を支援する豊富なツールが用意されている(表1)。
ステップ1~2では、認知症介護と環境への気づきを高めて、環境の課題や改善目標の共有を図るための検討会などを行う。
ステップ3~4では、理想とする暮らしやケアの姿を描き計画を立案し、それを実現するための環境的アイディアを物理的・社会的・運営的環境等から多面的に検討した上で、実施を行う。
ステップ5~6では、新たな環境をケアプランや暮らしに活かし、その効果について評価を行う。評価の結果、その取り組みを振り返り、次の課題に取り組み、さらに効果的な施設環境づくりを継続していく。