『すべての子どもを包括する支援システム:学際的議論~「学校プラットフォーム」の意味とは』シンポジウム

【開催日】 9月26日(土)13:00-17:30 (受付開始12:30) 【開催場所】 大阪府立大学 中百舌鳥キャンパス 学術交流会館 多目的ホール 【セミナー概要】 少年事件、居所不明問題、いじめ問題など事件が相次いでいる。 その背景には貧困や児童虐待などの課題が遠く影響している可能性を意識すべきであろう。 子どもの問題の喫緊の課題に対し、平成26年夏に子供の貧困対策大綱が成立した。その内容を実現させ機能させるのはこれからである。 例えば、その内容の1つにスクールソーシャルワークが明記され、5年後には中学校に1人の配置が示唆された。しかし、人を配置すればいいというものではない。機能するような仕組みをどう作っていくのか、教育と福祉の協働のあり方や明示された学校プラットフォームの意味は何なのか。 なぜ学校なのか、日ごろ福祉の研究者と教育、政治学、社会学の研究者で議論することはさほど多くはない。 ■基調講演1 「福祉政治学の立場から」宮本 太郎 氏(中央大学教授) ■基調講演2 「教育行政学の立場から―国の教育政策や自治体の取組み動向―」小川 正人 氏(放送大学・東京大学名誉教授・中教審副会長) ■討論 大谷 圭介 氏(文部科学省生涯学習政策局参事官 子供の貧困担当) 坪田 知広 氏(文部科学省初等中等教育局児童生徒課長) 中野 澄 氏(国立教育政策研究所総括研究官) 松田 恵示 氏(東京学芸大学教授・学長補佐) ■コメント 古川 夏樹 氏(厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長) ■進行 … Continued

効果的なSSWer配置プログラムのあり方研究会

(50音順) 代表 山野 則子(大阪府立大学 教授) 駒田 安紀(大阪府立大学 研究員) 周防 美智子(岡山県立大学 講師/大阪府立大学博士後期課程) 厨子 健一(大阪府立大学博士後期課程) 横井 葉子(大阪府立大学博士後期課程/神奈川県スクールソーシャルワーカー) ※ほか複数の自治体、スクールソーシャルワーカーの方にご参加いただきました。 *本マニュアルは、実践現場、研究者、多くの関係者の皆様にご協力いただき、完成することができました。また、日本社会事業大学学長大島巌先生に多大なご支援とご助言をいただき、報告書(日本社会事業学内共同研究報告書「効果の上がる退院援助促進支援事業・就労移行支援事業モニタリングシステムの開発」2010年)をかなり参考にさせていただきました。ここに厚くお礼申し上げます。   効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラム  実施(改訂版)マニュアル・評価マニュアル ~全国調査、試行調査の実証、実践家の議論を経て~ 発行年月   :2014年3月 発行者    :大阪府立大学キーパーソンプロジェクト 効果的なSSWer配置プログラムのあり方研究会 (代表 山野則子 ・ 編集 駒田安紀) 連絡先    :大阪府立大学 人間社会学研究科/教育福祉学類 山野研究室 住所     :〒599-8531 大阪府堺市中区学園町1-1 電話・FAX   :072-254-9783 E-mail:    :yamano@sw.osakafu-u.ac.jp           http://www.human.osakafu-u.ac.jp/ssw-opu/index.html      *本誌の中の研究は、日本学術振興会科学研究費補助金【基盤研究(A)】「ソーシャルワークの評価方法と評価マニュアル作成に関する研究」(研究代表者:白澤政和、連携研究者:山野則子)の助成による部分が大きい。最終的に、本マニュアルは、大阪府立大学キーパーソンプロジェクトの助成で作したものである。

5-2-2. 「効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラム」 効果的援助要素リスト ≪サービス利用計画≫

<チェックのつけ方>                  チェック実施月:(   )月 上記の「チェック実施月:(   )月」の欄は、実施月をご記入ください。各チェックボックスの□に、該当する場合チェックをつけてください。 前提としての「SSWerとしての基本的な姿勢」を持って、A「学校組織へのアプローチ」、B「教育委員会へのアプローチ」、C「関係機関・地域などへのアプローチ」、D「子ども・保護者へのアプローチ」を意識的に活動するためにチェックリストをご活用ください。定期的にチェックしてみてください。いくつかの項目はすでに効果に反映できる項目として実証しています(山野ほか2014)。各項目の説明は、5-2-1(pp. 37-45)に掲載しています。ご参考にしてください。 このチェックボックスの各項目は,SSW確立に欠かせない教育委員会担当者の皆さんとSSWerの動きをリンクさせてモデル的な実践に照らして,より効果的な実践を目指すというSSWの確立のためのものです.大変お忙しいところ恐縮ですが,各自治体でのSSWの確立に有効となるよう,ご利用いただけたら幸いです.     SSWerとしての基本的な姿勢  ※この項目は本マニュアルでのエビデンスに基づく評価の対象ではありません。しかし、実践上は非常に重要です。 □子ども・保護者に対してSSWerとしての基本的な姿勢を持っているか △一人ひとりの子ども・保護者を個人として尊重する △子ども・保護者のパートナーとして一緒に問題解決に取り組む △子ども・保護者の利益を第一に考える △子ども・保護者の秘密を守る △子ども・保護者の問題よりも可能性に目を向ける △子ども・保護者が物事を自分で決めるようにサポートする △子ども・保護者個人に責任を求めるのではなく、環境との相互影響に焦点を当てる(エコロジカルな視点) □面接において、ケースワークの原則に基づいて実施しているか △個別化の原則           △意図的な感情表現の原則 △統制された情緒的関与の原則    △受容の原則 △非審判的態度の原則        △自己決定の原則 △秘密保持の原則          △専門的援助関係の原則   A.学校組織へのアプローチ A-1      学校アセスメント(さまざまな資源を活用して学校の状況を把握する) □把握することについて △管理職がSSWerの役割をどう理解しているかを把握する △管理職のSSW活用のニーズを把握する    △管理職と他の教員との人間関係を把握する △学校における合意形成のプロセスを把握する  △校内チーム支援体制の現状を把握する △教員の動き方を把握する           △教員同士の力関係を把握する □聞くことについて 誰から △管理職から聞く    △管理職以外の教員から聞く △学校事務など、教員以外の職員から聞く △校内支援者から聞く   △生徒指導主事から聞く   △校外支援者から聞く 何を △校務分掌を聞き取ったり、その資料などを入手する △不登校率を調べたり、聞き取ったりする △就学援助率を調べたり、聞き取ったりする △生活保護率を調べたり、聞き取ったりする □観察することについて … Continued

5-2-1.  ≪サービス利用計画≫

以下に挙げる効果的援助要素のうち、項目全体がSSWerのマクロアプローチに該当するものには項目名の後ろに(マクロアプローチ)と記している。項目全体がマクロアプローチに該当するわけではないが項目の中にいくつか含むものについては、p.47以降に示す効果的援助要素の中に、波線を引いて示している。   ◀SSWerとしての基本的な姿勢▶ 一人ひとりの子ども・保護者(場合によっては教員も含む)を個人として尊重し、一緒に問題解決にあたっていく姿勢を守る。子ども・保護者の利益を第一に考え、彼らの秘密を守る。また、彼らの問題よりも可能性に目を向け、物事を自分で決めるようにサポートし、個人に責任を求めるのではなく、エコロジカルな視点で、環境との相互影響に焦点を当てる。 「バイステックの7原則」(①個別化、②意図的な感情表現、③統制された情緒的関与、④受容、⑤非審判的態度、⑥自己決定、⑦秘密保持)など、ケースワークの基本に則り活動を行う。   引用元: 特定非営利活動法人日本スクールソーシャルワーク協会「スクールソーシャルワーカーとは?」 (http://www.sswaj.org/w_ssw.html#shisei, 2013.3.4). Biestek, Felix. P.(1957)The Casework Relationship, George Allen & Unwin Ltd.(=1965, 田代不二男・村越芳男訳『ケースワークの原則――よりよき援助を与えるために』誠心書房.)   A.学校組織へのアプローチ A-1      学校アセスメント(さまざまな資源を活用して学校の状況を把握する) ■目的 学校を理解するための情報を集め、学校や子どもの状況を把握し、ニーズを見たて、活動方法を検討することによって、学校や子どもに必要とされるSSWerの活動を展開する。また、学校がSSWerについてどのように理解しているかを把握することによって、学校がSSWerの専門性を理解して活用できるようにする。 ■具体的実施内容 学校がSSWerの役割をどのように理解しているか、管理職のSSW活用のニーズ、管理職と他の教員との人間関係、教員同士の雰囲気、学校における合意形成のプロセス、教員の大変さ、教員同士の力関係を把握する。教員、指導主事(校内支援者)、校外支援者に対し、教員の勤務体系や校務分掌、不登校率、就学援助率、生活保護率などの学校の状況を聞く。学校訪問時、職員室の反応、掲示物、ゴミの散乱状態、靴箱の状態、廊下の状態、学校備品の破損状態を観察する。 上記のような情報を整理し、活動開始前に学校状況をアセスメントする。   A-2      地域アセスメント(さまざまな資源を活用して地域の状況を把握する) ■目的 地域を理解するための情報を集め、地域の状況を把握し、ニーズを見たて、活動方法を検討することによって、地域に必要とされるSSWerの活動を展開する。 ■具体的実施内容 学校行事(参観や運動会、懇談会など)への参加、地域主催の取り組みへの参加、校区内の見回りなどによって地域の状況を把握し、関係機関訪問、地域のさまざまな会議への参加などにより、インフォーマルを含めた地域資源の種類と役割、対応範囲を把握する。 管理職、管理職以外の教員、指導主事、民生委員・児童委員、主任児童員、警察、PTA、 地域の自治組織、保護司などから、地域の歴史や特性、市営住宅の有無・児童養護施設の有無・犯罪率などを調べたり、聞き取ったりする。 上記のような情報を整理し、活動開始前に学校状況をアセスメントする。   … Continued

5-1-2. 「効果的なスクールソーシャルワーカー配置プログラム」 効果的援助要素リスト ≪組織計画≫

  <チェックのつけ方>                  チェック実施月:(   )月 上記の「チェック実施月:(   )月」の欄は、実施月をご記入ください。各チェックボックスの□に、該当する場合チェックをつけてください。 A「(年度ごとの)事業開始に向けて情報収集」、B「戦略を練る」、D「事業の配置」を意識的に実施するためにチェックリストをご活用ください。各項目の説明は、5-1-1(pp. 21~27)に掲載しています。ご参考にしてください。 このチェックボックスの各項目は、SSW確立に欠かせない教育委員会担当者の皆さんとSSWerの動きをリンクさせてモデル的な実践に照らして、より効果的な実践を目指すというSSWの確立のためのものです。大変お忙しいところ恐縮ですが、各自治体でのSSWの確立に役立つよう、ご利用いただけたら幸いです。 いくつかの項目はすでに効果に反映できる項目として実証しています(山野ほか2014)。定期的にチェックしてみてください。   A. (年度ごとの)事業開始に向けた情報収集 A-1      学校・地域の実態把握と課題分析 □児童生徒の問題に対して支援ができる機関・人材が、教育委員会内にあるか(相談事例の内容や件数)具体的に知っている △適応指導教室 △教育センター △SC活用事業 △その他の教育相談促進事業 □児童生徒の問題に対して、教育委員会以外にどのような機関が関わっているのか把握し(相談事例の内容や件数)、それぞれの機関がどのような支援をできるのか具体的に知っている △家庭児童相談室・市町村の児童相談部局 △要保護児童対策地域協議会 △児童相談所 △福祉事務所 △保健所 △警察 △少年サポートセンター △発達障害者支援センター △精神保健福祉センター △婦人相談所 △法テラス △地域包括支援センター △ひきこもり地域支援センター □全国と比較して、地域ごとの問題行動や学校の実態について、以下の統計や関係機関から情報を得て分析を行っている △犯罪率 △生活保護率 △就学援助率 △ひとり親家庭率 △不登校出現率 △いじめ認知件数 △暴力行為発生件数 △児童虐待件数 □児童生徒の問題について、データ分析に基づいて、上司や議会に改善の必要性と方法を提言している □児童生徒の問題について、どのくらいの期間で、何をもって、どう改善するのかを明らかにする □児童生徒の生活や背景となる問題(経済的困窮など)を事例レベルで把握する仕組みを持ち、データ化して検討している   A-2      ソーシャルワークの視点を持つ人材の必要性を認識 □教員とは異なる視点で、子どもの側に立って、家族や周りの人にどのように働きかけるかを一緒に考えてくれる人材が必要であると感じる □学校現場に福祉機関と学校をつないでいく人材が必要であると感じる □潜在的に支援を必要としている子ども・保護者に働きかける人材が必要であると感じる □学校現場に社会福祉の知識や考え方を加えることが必要だと認識する   A-3      SSWに関連する情報収集 □全国のSSWerの活動の情報を収集する担当を教育委員会内に置く □他の都道府県・市区町村のSSWer活用事業を視察したり、資料を取り寄せたりしてSSWに関する情報を収集する □SSW研修会・講演会・ワークショップなどに参加し、SSWに関する情報を収集する □社会福祉に関する職能団体の情報を収集する □収集した情報をもとに、子ども・保護者にSSWerがどのような働きをするのかをイメージする □人材を養成する地域の機関とのつながりを持ち、人材について情報収集する □人材を養成する地域の機関とのつながりを持ち、SSWerの専門性について学ぶ □SSW導入の効果について調べる … Continued

5-1-1. ≪組織計画≫

A. (年度ごとの)事業開始に向けた情報収集 A-1      学校・地域の実態把握と課題分析 ■目的 学校・地域の実態や社会資源の現状を把握・分析し課題を検討することによって、学校や地域のニーズを明確にし、改善に向けての見通しを立てる。 ■具体的実施内容 学校・地域において、児童生徒の問題に対し教育委員会内外の機関がどのような支援状況にあるのかを把握し、各機関の役割や機能を具体的に理解する。また、学校・地域の実態や課題について情報収集を行い、全国と比較し、分析を行う。これらに基づき、教育委員会の上司や議会に改善の必要性を提言し、具体的な改善策を提案する。   A-2      ソーシャルワークの視点を持つ人材の必要性を認識 ■目的 児童生徒の問題を改善するために、学校現場にソーシャルワークの視点が必要であることを認識する。 ■具体的実施内容 教員とは異なるソーシャルワークの視点で子どもの側に立って家族や周りの人への働きかけを一緒に考えたり、福祉機関と学校をつないだり、潜在的に支援を必要としている子どもや保護者に働きかける人材が欠かせないという認識を持つ。学校現場に社会福祉の知識や考え方を加えることが必要であると認識する。   A-3      SSWに関連する情報収集 ■目的 全国のSSWer活用事業を視察したり、SSW研修会に参加するなどして、SSWの役割・効果・活動情報などの情報を収集し、SSWer活用事業の実施を検討する。 ■具体的実施内容 教育委員会内にSSWに関連する情報を収集する担当を置き、他の都道府県・市区町村のSSWer活用事業に関する視察や資料の取り寄せを行ったり、研修会などに参加するなどして、SSWに関する情報や社会福祉に関する職能団体の情報を効果的に収集する。 収集した情報をもとに、子ども・保護者にSSWerがどのような働きをするのかをイメージし、SSW導入の効果について調べる。また、人材養成機関から人材について情報収集するとともに、SSWerの専門性について学ぶ。   B. 戦略を練る B-1 課題分析(A-1)と情報収集(A-3)をふまえたフレイム作り ■目的 学校・地域の課題分析や収集したSSWに関する情報を活用して、またその情報に基づき意見を募ることで、SSW事業化に向けた事業案を検討し、事業の狙いと成果指標を主導的に決定する。 ■具体的実施内容 A-1で行った課題分析とA-3で行った情報収集に基づき、校長会役員、SVer、他事業関係者らを招集して会議を開く。教育委員会内の機関や福祉機関の相談事例の内容などを会議にて周知し、意見を募る。それらを踏まえて、校長会役員、SVer、教員代表、SCら、事業に関与する人々を集めて事業化に向けた会議を持ち、主導的に事業の狙いと成果指標を決定する。   C. 職務内容の設計 C-1  教育委員会の戦略を形にする ■目的 SSWer活用事業実施要綱や行動計画などを策定し、広く周知する。SSWerの配置形態を決定、学校や関係機関に対する働きかけの内容を具体化するなど、戦略を形にすることによって、SSWer活用事業の効果的な実施を図る。 ■具体的実施内容 Aで収集した情報と、Bで練った戦略を基に、都道府県あるいは市町村教育委員会、学校と、SSWerやSVerの関係の全体構造を作り、役割分担を行う。事業の狙いや成果指標を踏まえてSSWerの勤務体系や配置形態(配置型・派遣型・拠点型など)を決定する。連絡協議会を立ち上げたり他事業との系統性や関連性を持たせる計画を立てる。 SSWer活用事業実施要綱・実施規則、SSWer活用ガイドラインを作り、事業土台を踏まえてSSWer活用の教育委員会・学校・SVer・SSWer・関係機関に働きかけるための行動計画を立てる。 … Continued

4-2. 効果的援助要素を構成する項目

  ≪組織計画≫ A. (年度ごとの)事業開始に向けた情報収集 A-1      学校・地域の実態把握と課題分析 A-2      ソーシャルワークの視点を持つ人材の必要性を認識 A-3      SSWに関連する情報収集   B.戦略を練る B-1  課題分析(A-1)と情報収集(A-3)をふまえたフレイム作り   C. 職務内容の設計 C-1  教育委員会の戦略を形にする C-2      SSWerとの協議 C-3      管理職・SSWer担当教員との協議 C-4      SVerとの協議 C-5      関係機関に対する戦略の実行   D. 事業の配置 D-1      SSWerの配置 D-2      他事業などを活用する事業配置 D-3      SVerの配置 D-4  SSWer活用事業に関連する人材の配置   E. … Continued

4-1. 語句の定義

○ソーシャルワーク(SW)   ここでは、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)が2000年7月27日に採択した「ソーシャルワークの定義」の内容を指す: 「ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウエルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である」(社団法人日本社会福祉士学会 2001)。 以下、ソーシャルワークをSWとする。   ○スクールソーシャルワーカー(SSWer) スクールソ-シャルワーカーは、学校をベースにソーシャルワーク活動を展開していく専門職である。文部科学省(2010)『生徒指導提要』では、「社会福祉の専門的な知識、技術を活用し、問題を抱えた児童生徒を取り巻く環境に働きかけ、家庭、学校、地域の関係機関をつなぎ、児童生徒の悩みや抱えている問題の解決に向けて支援する専門家」とされている(文部科学省 2010:120)。 以下、スクールソーシャルワークをSSWとする。   ○教育委員会 ここでは、「教育委員会」は、SSWer活用事業を実施する教育委員会を指す。そのほかの意味を持つ場合は、都道府県・市町村の別などの説明を加える。   ○教員 ここでは、同義語である「教師」を使用せず、「教員」の言葉を使う。広辞苑(第六版)によれば、「教員」とは、「学校に勤務して教育を行う人。教師。教育職員。」である。   ○スーパービジョン(SV) スーパービジョンは、実践への経験及び知識をもつスーパーバイザーによってワーカー(スーパーバイジー)との間に結ばれるスーパービジョン関係を通して実施される。その主たる目的は、クライエントへの援助の向上とワーカーの養成にある。なお、スーパーバイザーは、機関内の経験と知識のある職員が担当する場合と外部から招く場合がある。 スーパービジョンは、管理的・教育的・支持的機能の3つの機能をもつ。管理的機能とは、機関の目的に即して効果的にサービスが提供できるようにすることである。また、ワーカーが力を発揮できる組織づくりやワーカーの力量に応じたケースの配分等もこの機能に含まれる。教育的機能とは、主にケースへの指導を通して実践に必要な価値、知識、技術を具体的に伝えることである。これは、現任訓練の側面からも重要な意味をもつ。また、支持的機能とは、信頼関係に裏打ちされたスーパービジョン関係を通して、ワーカーの実践をスーパーバイザーが精神的にサポートすることである(山縣・柏女 2010:218)。 以下、スーパービジョンをSVとする。   ○スーパーバイザー(SVer) 監督者または管理者。スーパーバイジーに対してスーパービジョンを行う熟練した指導者のこと。 ここでは、文部科学省「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領」(平成21年3月31日)の「事業の内容」に「スーパーバイザーの配置」として規定された、「スクールソーシャルワーカーに適切な指導・援助ができるスーパーバイザーを学校・教育委員会等に配置」のことを指す(文部科学省 2009)。(ただし、スーパービジョンの学術的意味とは異なる) 以下、スーパーバイザーをSVerとする。   ○SV会議(スーパービジョン会議) ここでは、SSWerの専門性を生かした事業になるように、教育委員会が主催して、SVerとともにSSWer活用事業の企画についての意見交換を行う場をいう。   ○ケース会議 事例の援助過程において、的確な援助を行うために携わる者が集まり、討議する会議のこと(中央法規出版編集部 2012:114)。 ここでは、ケース会議はさまざまなケース会議を包括的に指し、特に「連携ケース会議」とした場合は、他機関と連携して行うケース会議のうち、要保護児童対策地域協議会を除く関係機関との会議を指す。援助が複数の機関、施設にまたがる場合は、関係する担当者が出席し、チーム対応を展開する場ともなる。   ○アセスメント 援助を開始するにあたって、問題状況を把握し理解するソーシャルワークのプロセスの一つ。問題状況の確認、情報の収集と分析、援助の方法の選択と計画までを含む幅広い概念である。事前評価と訳されることもある(山縣・柏女 … Continued

3.本マニュアルの活用法

3-1. 目的 本マニュアルは、実施マニュアルと評価マニュアルの2つで構成されている。SSWer活用事業を展開していく際の共通の枠組みを提示したものである。マニュアルは、(1)教育委員会担当者が活用する「組織計画」、(2)SSWerが活用する「サービス利用計画」の2つを作成している。 実施マニュアルは、エビデンス(根拠)が科学的に実証された実践(Evidence Based Practice)を実践者が意識的に実施していくことを目的にしている。評価マニュアルは、実践を振り返り課題を明確化させるなど評価を行うことが目的である。まずは、実践者が実施マニュアルを理解し、実施すること、そしてその実践を評価するために評価マニュアルを活用する。 評価は、本来は評価ファシリテーターとしての訓練を受けたものが行うのが望ましいが、現実的には研修を受けたスーパーバイザーによる評価がスーパービジョンとして活用できるものである。あるいはSSWer同士のピアな関係による評価として活用、あるいは教育委員会担当者との意見交換などに活用が可能である。事業評価として重ね、エビデンスに基づいた実践として定着、発展させることを目指す。 なお、本マニュアルは共通の枠組みを示したものである。本マニュアルを議論の土台として、自治体ごとの応用がいずれ生じることも想定している。   3-2. 対象 このマニュアルが対象としているのは、事業実施主体である教育委員会のSSWer活用事業担当者とSSWerである。主に、組織計画を教育委員会担当者、サービス利用計画をSSWerが活用できるように作成している。ただし、SSWer自身が事業発展に貢献する組織計画を行うことも必要であるので、サービス利用計画のの一部の項目にSSWerが関与するものを含めている。それらの項目については、項目全体がSSWerのマクロアプローチに該当するものには項目名の後ろに(マクロアプローチ)と記している。項目全体がマクロアプローチに該当するわけではないが項目の中にいくつか含むものについては、p.47以降に示す効果的援助要素の中に、波線を引いて示している。   3-3. 留意点 実施マニュアルの前半で「目的および具体的実施内容」を示し、後半では実際の項目を記載している。各チェックボックスには□と△の2種類の記号を使い分けている。□は、「以下を活用している」という意味で用いている。△は、□の下位項目であり、1つずつ活用しているかどうかを考えるポイントとなっている。 期間をあけて定期的に実施することによって、効果的な実践を意識することが可能となる。そのため、複数回チェックを実施することを考慮し、効果的援助要素リスト(チェックボックスのページ)をコピーして使用し、日常の活動に活用する。 評価としては、評価マニュアルにあるフィデリティ尺度(p.131以下)のページをコピーして実践者がチェックし、評価ファシリテーター(SVが可能性大)が確認し、この用紙をもとにやり取りを行うために使用する。       ≪組織計画≫ 都道府県教育委員会、あるいは市町村教育委員会のいずれが主体となって行うのかにより、それぞれのフレイムが異なってくる。ここでは主体となる教育委員会中心に記載してある。両者が主体となる場合は、それぞれが役割分担のもとで行う意味で記載してある。   ≪サービス利用計画≫ SSWerの活動は「派遣型」と「派遣型」の配置形態によって異なるため、どちらか一方のみが該当すると考えられる項目については、チェックリスト中に<配置型>あるいは<派遣型>と記載した。(「巡回型」といわれる配置形態は、ここでは便宜上「派遣型」に含む。)このような指定のある項目は、該当する配置形態のところ(配置型・派遣型を兼務されている(並行)場合は、両方)の項目を参照されたい。また、<配置>と<派遣>に共通して該当すると考えられる項目については、特に記載していない。     引用文献 道明章乃・大島巌(2011)「精神障害者退院促進支援プログラムの効果モデル形成に向けた『効果的援助要素』の検討――全国18事業所における1年間の試行的介入評価研究の結果から」『社会福祉学』52(2),107-20. Rossi,P.H.,Lipsey,M.W.,& Freeman,H.E.(2004).Evaluation:A systematic approach(7th ed).London and New Delhi:Sage Publications.(=2005,大島巌・平岡公一・森俊夫・元永拓郎[監訳]『プログラム評価の理論と方法―システマティックな対人サービス・政策評価の実践ガイド』日本評論社.) 山野則子ほか(2011)「スクールソーシャルワーカーによる支援プログラムに関する研究」白澤政和『ソーシャルワークの評価方法と評価マニュアル作成に関する研究 第一報』,83-143. 山野則子ほか(2012)「スクールソーシャルワーカー配置プログラムに関する研究」白澤政和『ソーシャルワークの評価方法と評価マニュアル作成に関する研究 第二報』,38-91. Bond et … Continued

2-6.フィデリティ尺度によるプロセスモニタリングと尺度の妥当性

フィデリティ尺度の妥当性を検証するために、「効果的援助要素」に基づく介入調査を実施した。調査期間は、2013年6月~9月および2013年12月~2014年1月である。調査結果は、図4、5(組織計画、サービス利用計画)である。効果的援助要素は、教育委員会担当者、SSWerに対するインタビュー調査、実践家参画の研究会を踏まえて作成している。その結果、プログラムが備えるべき要素は十分網羅されており、尺度として内容的妥当性を有していると考えられる。 結果をみて分かるように、同一領域内でも実施度のばらつきがみられる。できている点と課題点を明確にできる上で有用性をもっているといえる。(詳細は、「はじめに」※3 参照)  

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