2.5 組織論   〜生活保護就労支援プログラムの実施体制〜

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2.3インパクト理論のところで、「生活保護就労支援プログラム」において、「組織の充実」は近位のアウトカムであり、さらに「ピアサポートグループの形成による支援体制の充実」は遠位のアウトカムであると述べました。つまり、「生活保護就労支援プログラム」は、組織の充実という結果をもたらすことで新たな利用者に対しさらに充実した支援を影響していきます。組織の充実によって形成されるべき、組織図を図3に示しています。組織の充実によってこの組織図に示したような組織を形成することがこのプログラムの1つの目的です。

組織図の縦のラインは、貧困に対し具体的な情報を持っている順に配置しています。利用者・元利用者から具体的な情報が発信され、福祉事務所でニーズとして捉えられ、NPOや企業といったサポート団体に具体的なアイデアとして伝達されます。

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図3 生活保護就労支援プログラムにおける組織論

*プログラム導入期における留意点
プログラム導入期における組織は、福祉事務所の中で導入に意欲の高いスタッフから形成されます。福祉事務所の規模が小さく査察指導員と生活保護ケースワーカー二人のみの場合も導入が可能です。また、福祉事務所のこれまでの方向性によっては、利用者やNPO・協力企業と協力関係を築くまでが難しいと考えられます。その際には、NPO・大学等外部の組織を含めた独立した委員会を立ち上げ、方針・方向性を決定することが重要になります。
福祉事務所内の管理運営部門が中心となり、ハローワーク・NPOや地元企業を訪問し、問題としての貧困への協働関係を形成していきます。その上で就労支援部門が中心となり、利用者の就労希望を聞き管理運営部門へ伝えます。管理運営部門は、その情報を元にハローワーク、NPO、地元企業などとともに協議し、でき得る限りのメニューを用意し、就労支援部門が利用者とともにそのメニューを活用していきます。このように連携は実践的な目的に沿って行われていきます。
以下に組織化の流れを示します。

就労支援チームとは、貧困と偏見を遠ざけ、生活の質を向上するために、協力企業と生活保護利用者とを結びつける支援者集団です。

第1段階:目標(プログラム哲学)の確認

  • スーパービジョン契約
  • 目標は貧困と偏見を遠ざけ、利用者の生活の質を向上することである。
  • 目標をチーム内で共有する

第2段階:スタッフのニーズ把握

  • スタッフの現実、ニーズ、価値を明確化
  • インタビュー形式で現実、欲求、価値を引き出す
  • コアメンバーのリストアップを行う

第3段階:業務内容の改善

  • 就労支援組織づくり委員会を組織する
  • 定例(月1回)のミーティングを行う
  • 就労支援組織づくりを業務に位置づける
  • 個々のスタッフの強みを明確化
  • 強みに基づく委員会づくり
  • スタッフにとって魅力的な取り組み内容へ変更
  • チーム制導入
  • 自己目標管理導入
  • 情報ツールの吟味
  • 就労支援組織についての意見交換を行う
  • サービス実施のための費用を確保する
  • 提案書に基づきプログラム導入のための福祉事務所事業計画を作成する
  • 基礎研修(目的の具体化の方法を学ぶ)を受講する
  • 研修会に参加し、就労支援組織づくりを学ぶ

第4段階:新しい取り組み実施

  • 企業やNPOなどに対して利用者を中心としたチームで啓蒙、広報活動を行い、協力事業所を地域に増やしていく。
  • 所得保障業務の縮小化

第5段階:チーム再編

  • 人事(それぞれの委員会リーダー選出、チームリーダー選出)
  • 第1段階へいき、新規のコアメンバーを選定する。

 

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図4 生活保護就労支援プログラムにおける組織づくり