「生活保護就労支援プログラム」の作成にあたり、まず、「生活保護自立支援プログラム事例集」で取り上げられた福祉事務所の中から、調査協力に同意の得られた福祉事務所14箇所に対して、訪問面接調査を実施しました。そして、面接調査のインタビューデータを内容分析の手法を用いて分析し、各福祉事務所が行っている先進的な取り組みを、援助要素として抽出していきました。さらに、生活保護自立支援プログラム事例集や先行研究から、援助要素を追加・修正を加えました。
このような経緯で、援助要素リストを作成し、援助要素リストに挙げられた項目から構成される暫定効果モデルを作成しました。暫定効果モデルを作る際には、福祉事務所の個別性や地域性などは考慮しないようにしました。暫定効果モデル作成の段階では、可能な限り個別性や地域性などの影響を受けない、より幅広く使える普遍性の高いプログラムとしたほうが良いと考えたからです。
その後、集団意見調査として「生活保護自立支援プログラム事例集」で取り上げられた福祉事務所の中から、福祉事務所職員(就労支援関係者)13自治体に集まっていただき、ワークショップを開催しました。
ワークショップの進め方としては、福祉事務所職員が自発的に意見を出し合うためにエンパワメント評価 の手法を用いました。
このワークショップの結果、就労支援員の導入に代表される既存の取り組みによって一定の成果があがっているものの、意欲を明確に示さない利用者や医療との連携が必要な利用者などに対しての支援が行き届いておらず、これらの利用者への取り組みにばらつきが大きいことがわかりました。そのような違いがある中、査察指導員と生活保護ケースワーカー、就労支援員など立場まで違う就労支援関係者が、インパクト理論 の検討としてプログラムの目標を議論し、それぞれの立場から効果的援助要素に関する発言をしていきました。立場の違いから議論開始当初は意見の違いがあったにも関わらず、それぞれの意見の目的が明確化していく中でコンセンサスが形成され、プログラムの方向性を決めることができました。
こうした取り組みの結果を反映させ暫定効果モデルをさらにブラッシュアップさせ今回のモデル構築に至りました。
今回の暫定効果モデルの作成にあたっては、「生活保護自立支援プログラム事例集」や面接調査、先行研究や過去の報告書を参考にしました。しかし、モデルに含まれるべき全ての援助要素を網羅できているわけではありません。また、前述のとおり、個別性や地域性などは考慮していません。今後、暫定効果モデルに基づいた「生活保護就労支援プログラム」が広く実践で活用され、各福祉事務所により適した形に修正を加えられることにより、さらに効果的なモデルとなると考えています。「暫定効果モデル」の暫定とは、今後、修正され、発展していく必要性があることを意味しています。